キャンプで薪割りにナイフを使用される方も多いですよね。
取り回しやすく重い斧に比べて軽量ですし、なによりナイフだけであらゆることをこなしたらカッコいいです。
それらを重々承知の上で『ナイフでの薪割りは避ける』べきです。
ハードな作業は斧に任せてナイフは細かい作業だけにすれば問題ないのですが、「ナイフ1本で何でもこなしたい!だってカッコいいもん!!」というロマンも十分わかります。
そこでこの記事では”丈夫であるはずのフルタングナイフ”を壊してしまった筆者が、どのような使い方をしてなぜ壊れてしまったかについて調べてみました。
「大切なナイフの刃を欠きたくない!」
「これから新しくナイフを購入しようと思ってるんだけど、、、」
という方は是非最後まで読み進めてくださいね。
キャンプ芸人「ヒロシ」愛用
ノルウェー製万能ナイフ
より美しくより強靭に
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欠けるナイフは「その丈夫さゆえに」刃こぼれしやすい
硬い広葉樹にナイフを突き刺して薪割台で叩いたらいつもと違う手応えが、、、
パキッと先端が欠けてる。
剣鉈などで知られる土佐打和刃物『豊国鍛工場』のMASANO 03っていう洋風ナイフ。
刃厚5mmのフルタング(先からお尻まで一枚の鋼材で出来た)ナイフで、鋼材は「D2鋼」で出来ています。
一般的に
・折れにくく
・切れ味が良く
・刃持ちが良い
という耐摩耗性に優れたセミステンレス製のナイフです。
ステンレスに比べてサビやすい鋼材らしいですが、3年間雨の日にも使用しても一か所もサビたりはしていません。
D2鋼の硬度は「HRc59~60」で比較的硬い鋼材で、同程度の硬度のカーボン鋼(炭素鋼)に比べて”靭性(じんせい)の弱い鋼材”です。
靭性は”ねばり強さ”のことで、強いほどふんばりが強くて刃こぼれしにくくなります。
MASANO 03は刃厚こそあるもののグラインド(研ぎ位置)が高い位置から始まっていてドロップポイント(刃先が下がっている形状)なので先が薄くなっています。
形状的に先端の強度が低くなっているのに加えて”硬いけどもねばり弱い鋼材”の
「硬くて丈夫なんだけども刃こぼれしやすいナイフ」
突き刺した薪も奥の見えないところに芯があって運悪く思いっきりヒットしたようで先端が”欠けて”しまったんですね。
鋼材の多くは硬度が高いほどねばり弱いものが多いので、硬いほど刃こぼれしやすいナイフが多いですよ。
私は新しいナイフを検討していて候補と上がっていたのがフィンランドの「Roselli(ロゼリ)」のロゼリウーツ鋼(HRc66~68)ナイフですが、
研ぎやすく靭性もある鋼材を使用した「HEIMO(ヘイモー)」を視野に入れています。
元々見た目で迷っていた部分もありますし、今回の先端チップがなかったとしても新しいナイフ選びはしていました。
薪割りしなくともフルタング構造の方が何かと安心感はありますよね。
ナイフで薪割りするやり方
結論としては『ナイフで薪割りは避けるべき』なのですが、ナイフ1本で薪割りから調理までこなしたい方もいらっしゃいますよね。
ナイフで薪割りをする場合、2つのやり方があります。
一つは私が今回行った「薪に突き刺して打ち付ける方法」、もう一つは有名な「バトニング」です。
ナイフの先端を欠いておいてなんですが、おススメは前者です。小割りを作るだけならフルタングである必要はありませんし、なによりも安全に薪割りすることができます。
バトニングはナイフの背を叩いて薪を割るので、割れた薪が勢いよく周りに飛ぶ可能性があります。
最悪の場合”ナイフが脚など身体に刺さる”危険も十分あります。
周りに気を付けるとともに振りぬかれたナイフがどこに行くのかをしっかりと確認しておく必要があります。
一方で、薪にナイフを突き刺して薪割台などに打ち付ける割り方は割れた薪が飛んだり身体にナイフが刺さる心配は少ないです。
振り下ろして使うイメージの強い斧も同様ですよ。薪の端と柄の端を持って重ねて薪割台や別の薪に打ち付けると安全に薪割りできます。
芯や瘤のある薪を知らず知らずの内に打ち付けると、形状にもよりますがナイフの先端が欠けることもあります。(私がそうでした。)
そのため、ナイフで薪割りは避けた方が良いと私は考えます。
キャンプでナイフに向いた作業
薪割り以外でキャンプでナイフを使う場面は
・フェザースティック作り
・木を削る
・ロープを切る
・袋や箱を開ける
・食材を切る
程度です。
薪割りで使わないとなると”そこまで強度は必要ない”です。
先端からお尻まで1枚の鋼材で出来たフルタング構造は不要ですし、刃長や刃厚もそこまで長く厚いものは必要ありません。
「キャンプで使うならハマグリ刃でフルタング構造で刃厚のあるもの!!」
と言われるのはあくまで薪割りを行う場合です。
薪割りをナイフでしないのであれば選択肢の幅ぐっと広がりますよ。
もちろん、フルタング構造のナイフの方が安心感はありますし、丸く厚みのあるハマグリ刃でもフェザースティックを綺麗に作ることはできますよ。
先端の欠けたMASANO 03でも綺麗にフェザースティックを作ることは可能ですし、突き刺すことは難しくともバトニングならできます。
鋼材の粉が食材に入り込むのは避けたいので料理には使えませんが。
キャンプにおいてナイフの刃先はウッドクラフトをしない限りは出番が少ないです。
先端がなくとも困りはしませんが、やはり見た目がよろしくないですね。
ナイフ選びは鋼材選び
ナイフは見た目で選ぶ方も多いですが、実用性も考えて選ぶのであれば鋼材もしっかりと吟味した方が後悔することは少ないですよ。
硬い鋼材は研ぐのも大変ですし、先端が欠けたりしたら電動グラインドがない限りは修復は難しいです。
お店で研いでもらおうにも”硬い鋼材は嫌な顔”されますよ。(断られることもあります。)
キャンプのナイフにおススメの鋼材は
「カーボン鋼(炭素鋼)」
「Sandvik(サンドヴィック) 14C28N」
「Bohler(ボーラー) N690Co」
「Crucible(クルーシブル) CPM-3V」
「Uddeholm(ウッデホルム) Sleipner」
です。
カーボン鋼は配合や焼き入れによって大きく特性が異なりますが、BRISA(ブリサ)やKELLAM(ケラム)、Roselli(ロゼリ)は素晴らしいカーボン鋼を使用しています。
ちなみに、ソロキャンプ芸人で有名な「ヒロシ」さんはHELLE(ヘレ)のディディ・ガルガルを愛用されていますが、もし購入されるなら2022年モデル以降を強くお勧めしますよ。
従来のモデルでは鋼材が12C27Nであったのに対し、14C28Nになったことでステンレス製でありながら靭性がある鋼材に変わりました。
(12C27Nも良質なステンレスですがやや柔らかい。薪割りしないなら不自由なしです。)
他にもハンドル材がケボニーからカーリバーチに変更になったことで見た目の美しさも増しましたね。
(シースもブラウンからブラックに変わっています。)
私は次のナイフにはもっと”やれた感じの1本”が欲しいので候補ではないですが、キャンプブームもひと段落して正規代理店の「UPI」さんで定価で入手できる機会が増えましたので美しく実用性も求める方にはオススメの1本ですね。
欠けたMASANO 03は時間をかけて荒砥で自分で研ぎ直してみます。
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